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なぜ、野菜を育てようと思った時に肥料が必要になるのでしょうか。
それは「肥料=栄養」だと考えると分かりやすいです。
わたしたち人間がご飯を食べないと生きられないように、野菜が成長するためにはさまざまな栄養が必要です。
山や森へ行くと、草木が元気に生い茂っているのを良く目にすると思います。
それは、土の中の栄養がとても豊富だから。
枯れた草や虫の死骸などが分解され、堆肥となって土の栄養になります。
しかし、人工的に作る庭や鉢、畝などは、自然界と状況が大きく異なります。
土に含まれる栄養が少ないため、肥料を使った栄養補給が必要です。
そうは言っても、ホームセンターに行けば非常に多くの肥料が陳列されています。
何をどのように使えば良いかが分からない…そう感じるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、野菜が元気に育つために必要な栄養の成分(肥料の三要素)や、化学肥料と有機肥料のちがい、具体的な肥料の種類について説明します。
肥料の三要素について知ろう
肥料は大きく3つに分けられ、それぞれ目的に合った特徴があります。
順番に見ていきましょう。
①窒素(N)
窒素は植物を大きく生長させる栄養で、特に葉を大きくする効果があります。
そのため、「葉肥(はごえ)」と言われます。
②リン酸(P)
リン酸は花や実を付けるための栄養で、「花肥(はなごえ)」や「実肥(みごえ)」と言われます。
③カリウム(K)
カリウムは根や茎の生育を促すための栄養で、「根肥(ねごえ)」と言われます。
これら3つに、カルシウム(石灰)とマグネシウム(苦土)を加えて「肥料の五要素」と呼ぶ場合もあります。
カルシウムとマグネシウムは、土の酸性度(pH)を調整するために用いられます。
化学肥料と有機肥料のちがい
肥料の三要素について理解したところで、続いては実際に使われる肥料を見ていきましょう。
よく聞くのは、化学肥料と有機肥料です。
これら2つは、元となる原材料と作り方が異なります。
化学肥料
化学肥料は、その名の通り、化学的な製造工程を経て作られた肥料です。
人工的に作ることができるため、先ほど紹介した肥料の三要素を1つずつ肥料にしたり、2つ以上の要素を混ぜたりすることができます。
1種類のみを含む肥料を「単肥(たんぴ)」、2種類以上を含むものを「複合肥料」とそれぞれ呼びます。
化学肥料の特徴は、下記のとおりです。
- すぐに効き目を感じられる
- 単肥を使うことで、足りない栄養のみを補給できる
化学肥料は、既に植物が吸収しやすい形で肥料成分が含まれています。
そのため、速効性があるという特徴を持っています。
このような理由から、化学肥料は野菜の成長に合わせて土に与える肥料(追肥)として使われることが多いです。
追肥については、後ほど説明します。
さて、化学肥料と聞いて、どんなイメージを持たれるでしょうか?
化学物質が元になっていると聞くと、安全性を心配する方も多いのではないでしょうか。
肥料は、皮膚に付くことや口に入ることまでを考えて、毒性があるものは使用できない決まりになっています。
人体にも影響のない安全なもので作られているため、安心して使えます。
ただし、化学肥料は自然に作られたものではありません。
与えすぎると、野菜が病気になりやすくなったり、土が痩せてしまったりという問題も出てきます。
効き目も早く使いやすいため、ついつい多用してしまいがちな化学肥料。
しかし、上記のような問題もあります。
野菜や土へ与える影響も考えたうえで、使うかどうかを決めると良いでしょう。
有機肥料
一方、有機肥料は、動物や植物などの有機物を原料とした肥料です。
肥料の種類については後ほど説明しますが、含まれる三要素の割合がものによって変わってきます。
有機肥料の特徴は、下記のとおりです。
- 時間をかけてじっくりと効果が出る
- 作物が根を張りやすいような、良い土ができる(土壌改質)
有機肥料に含まれる成分は、そのままでは植物が吸収しにくい形になっています。
そのため、土の中で微生物に分解され、植物が吸収しやすい形へ変わるのを待つ必要があります。
だからこそ、効果がゆっくりと表れ、じっくりと効いていきます。
加えて、微生物たちが肥料成分を分解する過程で土壌改質の効果も期待できます。
このような理由から、有機肥料は野菜を植える前に土に与える肥料(元肥)として使われることが多いです。
元肥については、追肥と併せて後ほど説明します。
肥料の選び方
ここまでで、まずは肥料についての基本的な理解はがだいぶ深まって進んできたのではないでしょうか。
とはいえ、実際に何をどうやって選べばいいのか、迷ってしまいますよね。
そこでこの章では、具体的な肥料の選び方を2つご紹介します。
土の状態に合わせて選ぶ
1つめは、土の状態に合わせて選ぶ方法です。
これから野菜を育てる土の栄養状態がどうなっているのかを事前に調べ、その結果をもとに必要な肥料を与えるというものです。
土に含まれるすべての栄養を調べようとすると、専門の分析機関へお願いする必要がありますが、家庭菜園など趣味で野菜を育てたい場合にはそこまではいらないですよね。
そんな時に、誰でも簡単に土の状態を調べられる検査キットがあるのをご存じですか?
検査キットを使うことで、
- 肥料の三要素である「窒素」「リン酸」「カリウム」の量を把握できる
- 土の酸性度(pH)を調べることで、栄養の傾向を掴むことができる
と言われています。
検査キットでは、土の酸性度(pH)や電気伝導度(EC)を調べることができます。
- 酸性度(pH):土が酸性かアルカリ性かがわかる
- 電気伝導度:土に含まれる窒素の量がわかる
日本は火山が多く、もともとの土が酸性の傾向にあります。
そのため、植物自体も弱酸性を好むものが多いと言われています。
しかし、土によってはアルカリ性に傾いている場合もあり、その場合は硝酸系の肥料を使うなどして酸性に傾ける必要が出てきます。
また、電気伝導度が低い土は栄養が足らないことを示しているため、肥料を積極的に使う必要があります。
一方、電気伝導度が高い土は、逆に肥料が過剰になっているため、たっぷりの水で流してあげる必要があります。
このように、土の状態を適切に知ることで、肥料の効果を高めることができます。
野菜の特徴に合わせて選ぶ
2つめは、野菜の状態に合わせて選ぶ方法です。
土の状態に合わせて肥料を与えるのは、元肥の段階ではとても有効です。
しかし、植え付けを行い苗を育て始める段階(追肥)になると、野菜によって必要な栄養は変わってきます。
そこで、野菜ごとの特徴に合わせて、適切な栄養を与えることが大切です。
特徴別に、特に与えたい栄養と野菜の例を表にまとめました。
こちらの表を参考にして、肥料の効果を最大限に高めて、元気な野菜を育てていきましょう!
特徴 | 特に与えたい栄養 | 野菜の例 |
実を収穫する野菜 | リン酸(実肥え) | トマト、きゅうりなど |
葉物野菜 | 窒素(葉肥え) | 白菜、キャベツ、ほうれん草など |
根菜 | カリウム(根肥え) | にんじん、大根など |
肥料の種類
それでは実際に、肥料の種類を見ていきましょう。
牛ふん堆肥
3~6ヶ月をかけて牛ふんをじっくりと発酵させた、黒くてサラサラしたもの。
牛のふんが原料でありながら、嫌な臭いはしません。
特徴は、下記のとおりです。
- 植物が吸収しやすいように、土の中の有機物を分解してくれる
- 土の団粒化を進め、ふかふかの土に変えてくれる
肥料の三要素の成分量はそこまで多くありませんが、何より土を理想の状態へ変えてくれるのが一番の特徴です。
ふかふかの土になると、水分や肥料の持ちも良くなりますし、新鮮な空気や水が通りやすくもなります。
すると、野菜の根が空気や水分、栄養をたっぷり吸収できるようになります。
鶏ふん(発酵鶏ふん)
ニワトリのふんを発酵させたもの。
肥料の三要素がバランスよく含まれているほか、根の発育を進めたり、土の酸性度(pH)を調整したりするカルシウムやマグネシウムも含まれています。
特徴は、下記のとおりです。
- 有機肥料でありながら、効果が出るまでの時間が短い(速効性がある)
- アルカリ性のため、酸性に傾いた土を中和する効果がある
- 比較的安価であり、扱いやすい
乾燥鶏ふんもありますが、こちらは臭いが強く扱いづらいため、発酵鶏ふんを選ぶことをオススメします。
また、鶏ふんはすぐに分解される速効性の高い肥料のため、収穫までの期間が短い野菜の追肥として使うのが良いでしょう。
有機石灰
カキ殻や貝殻などを焼成し、粉砕したもの。
特徴は、下記のとおりです。
- アルカリ分を多く含むため、酸性に傾いた土を中和する効果が高い
- カルシウムの成分量が多く、肥料の三要素はほとんど含まれていない
有機石灰は、野菜の肥料というよりも、土の酸性度(pH)を調整するという目的で使われることが多いです。
そのため、作物を植える2~3週間前に、堆肥や他の有機肥料などと一緒に土へ混ぜ込んでおくと良いでしょう。
油かす
菜種や大豆などの油を搾った後に出る「搾りかす」を使って作られたもの。
肥料の三要素をすべて含んでいますが、特に窒素(N)が多く含まれています。
特徴は、下記のとおりです。
- 土に深く埋めることで、ゆっくりと分解させる効果がある
- 土中の微生物を増やすことができ、土壌改質材としても優れている
ただし、発酵が不十分なものだと、発酵時に発生するガスで作物の根を傷める(肥焼け)可能性があります。
そのため、発酵済みのものを選ぶか、野菜を植える2~3週間前に土に撒いてよく混ぜ込んでおくと良いでしょう。
燻炭
もみ殻を煙で燻すことで、蒸し焼きにしたもの。
特徴は、下記のとおりです。
- アルカリ性のため、酸性に傾いた土を中和する効果がある
- 土中の微生物を増やすことができ、土壌改質材としても優れている
- 土と混ざることで隙間ができ、通気性と水はけが良くなる
雨が続くと、土は酸性に傾いてしまいます。そんな時、燻炭を土に混ぜると良いでしょう。
野菜によっては、酸性を嫌うものもあるため、育てたい野菜の特徴をあらかじめ調べておくことをオススメします。
その他
ここで紹介したもの以外にも、まだまだ肥料の種類はたくさんあります。たとえば、
- 骨粉
- 米ぬか
- バットグアノ(コウモリの糞が原料)
- ボカシ肥(有機物をブレンドし発酵したもの)
- 落ち葉、枯れ葉
など。
自分に合った肥料を探してみてくださいね!
肥料を与えるタイミング
適切な肥料を選ぶことができたら、実際に野菜へ与えてみましょう。
肥料は、植え付けてから収穫するまでの間に、何回かに分けて行うのが基本。そのやり方は、大きく2種類に分けられます。
- 元肥:野菜を植える前に、土に与える肥料
- 追肥:野菜を植えた後、成長に合わせて土に与える肥料
それぞれの目的と、具体的な作業内容について順番に見ていきましょう。
野菜を植える前に土に与える肥料(元肥)
元肥は、植え付ける前に、使用する土に混ぜこんでおく肥料を指します。
種や苗が元気に生長していくため、しっかりと行っておく必要があります。
肥料の種類のところでも触れましたが、元肥を行うときには有機肥料を使うと良いでしょう。
有機肥料には、土の状態をより良くして苗の成長を進ませる効果があるためです。
詳しくは、肥料の種類で紹介したものをご覧ください。
有機肥料を入れ、しっかり混ぜこんで畝立てをしたあとは、2〜3週間時間をおいてから苗の植え付けや種まきをします。
【初心者向け】畑の基本的な土づくりの方法を解説ここで時間を置かずに植え付けてしまうと、肥料分が苗の根に当たってしまい、肥焼けという障害を起こしてしまう可能性があります。
最悪、枯れてしまうことにも繋がります。
そのため、肥料分がきちんと土に行き渡ってから、植え付けを行うようにしましょう。
野菜の成長に合わせて土に与える肥料(追肥)
追肥は、野菜が生長していく途中でその都度与えていく肥料を指します。
元肥でどれだけ栄養たっぷりの土を作れたとしても、植え付けを行ってからしばらくするとその効果は薄れてきます。
ご飯(栄養)は食べたら無くなるもの。
人間も同じですね。
追肥を行わないと、栄養が足らずうまく生長できないほか、実がなったとしても小さくなってしまったりとさまざまな問題へとつながります。
元肥と異なり、すぐに効果を発揮することを期待して行うため、成分の分解ができるだけ早い鶏ふんがオススメです。
また、肥料の成分は水に溶けることで効果を発揮します。
そのため、肥料を加えた後は、すぐに水を撒くことを心がけましょう。
参考までに、目的別の追肥の種類についてご紹介しておきます。すべて覚える必要はないかもしれませんが、知っておいて損はないでしょう。
- 芽出し肥:春に良い芽を出させるために与えるもの
- 置肥:固形の肥料を土の上に置いて与えるもの
- お礼肥:収穫後の体力回復を目的として与えるもの
注意点:肥料は多すぎても少なすぎてもダメ
さて、ここまで肥料のやり方について説明してきましたが、一つ注意点があります。
それは、「肥料は多すぎても少なすぎてもダメ」ということです。
少なすぎるとダメ、というのは分かりやすいですよね。
栄養が無ければ、野菜は育つことができませんし、実を付けることもできません。
与える肥料の量の目安は、購入した商品の説明に書かれています。
その説明書きを参考に、適正な量の肥料を与えると良いでしょう。
一方、多すぎるとダメ、というのはどういう事なのでしょうか。
肥料が多すぎると、野菜が余計な肥料をため込んでしまう、いわば「メタボ野菜」になります。
人間と同じですね。
メタボ野菜は虫も大好き。
すると虫が寄ってきやすくなり、せっかく作った野菜が虫に食べられてしまいます。
また、肥料が過剰になると、「肥焼け」という根が傷んだ状態となってしまいます。
そうなると、苗が下記の状態となります。
- 苗全体が萎れ、焼けたような見た目になる
- 葉っぱがベージュや茶色になり、明らかに活力が無くなってしなびてしまう
- 葉っぱに白い筋が入る
このようなサインが現れたら、肥料の与え過ぎを疑うようにしましょう。
対処法は、苗が水浸しにならない程度に多めの水を与え、肥料を流してしまうこと。
できる範囲で、根の周りから余分な肥料を流してしまいましょう。
そして、肥料の与えすぎは特に化学肥料を使う時に起こりやすい、と言われています。
化学肥料は速効性が高い反面、このような課題もあるのです。
そのため、ゆっくり長く効く種類の肥料を選ぶか、自然由来の有機肥料を与えることも選択肢に入れておくと良いでしょう。
ちょっと変わった肥料「緑肥」
最後に、これまで説明してきたものとは異なる、ちょっと変わった肥料をご紹介します。
それが「緑肥」です。
その名のとおり、農作物の周辺で植物を育て、それをそのまま肥料として活用するというもの。
緑肥には、イネ科やマメ科の植物が適していると言われています。
- イネ科:エンバク、ライムギ、ソルゴーなど
- マメ科:ヘアリーベッチ、クリムソンクローバー(ベニバナツメクサ)など
通常、雑草は伸びてきた段階で刈り取り、栄養が余計なところに流れてしまわないようにしますよね。
しかし、緑肥は違います。
それ自体が肥料として効果を発揮するほか、土壌改質や害虫予防、また雑草を防ぐ効果まで期待できます。
加えて、緑肥に使われる植物は育てやすく、家庭菜園レベルでも十分活用できます。
緑肥のメリットを5つご紹介します。
- 土作りを助けてくれる
- 土に栄養を与えてくれる
- 雑草を抑えてくれる
- 野菜を害虫や風から守ってくれる
- 畑の景観が良くなる
通常、土作りと肥料は別物ですが、緑肥は土に栄養を与えつつ土作りを促してくれます。
また、土を覆うように伸びる植物を使えば、雑草の成長を抑えてくれます。
高く伸びる植物を使えば、風や土の中にいる害虫から野菜を守ってくれます。
そして何よりも特徴的なのが、畑の景観が良くなるということ。
緑肥に使う植物によっては、花が咲きます。
通常の畑では考えられないことですが、野菜の周りで紫色や赤色の花が咲くことで、一段と綺麗に見えるといいます。
野菜を育てる上で、肥料は必須です。
しかし、植物の力を借りれば、手間をかけずに野菜を育てることができるかもしれません。
緑肥についても、良かったら活用してみてくださいね!
まとめ
この章では、野菜作りに必須な肥料について、初心者の方でも取り組めるよう丁寧に解説しました。
- 肥料の三要素:窒素=葉っぱ、リン酸=実、カリウム=根の栄養になる
- 市販されている肥料の種類や選び方
- 肥料のやり方
肥料の種類については、さまざまな肥料があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
どこから手を付けたらいいか分からない方は、まずは牛ふん堆肥、有機石灰、油かす、鶏ふんの4つを土に混ぜこみ、野菜が育ちやすい良い土を作っていきましょう。
石灰を混ぜ込むのもオススメです。
ただし、くれぐれも肥料のやり過ぎには注意!
また、育てる野菜の種類に応じて、適切な肥料を与えていきましょう。
たとえば、菜園の定番でもあるトマトの苗を植えたら、2週間後ぐらいには鶏ふんを与えてみるのがオススメです。
鶏ふんは速効性が高く、すぐに効果を実感できます。
他にも、今すぐに使える情報をたくさん盛り込みました。
皆さんの野菜作りにお役立ていただき、美味しい野菜をたくさん作っていってくださいね!
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